大判例

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名古屋高等裁判所 昭和30年(う)1142号 判決

論旨は、原判決は、罪となるべき事実として、「被告人は、法定の除外事由がないのに拘らず、常習として、(1)同月十五日前記岩本三郎方裏出口附近で、……」と判示しているが、右の「同月」というのが何時を指すのか判明せず、更に、(2)乃至(5)の判示事実も同様に日時判明せず、又、右の「前記」というのが何を指すのかこれ亦判明せず、結局、犯罪の日時場所が全然特定されていないので、原判決には理由不備の違法があるというのである。よつて、原判決を見るに、まさに弁護人所論のとおりである。およそ、刑事訴訟法第三百三十五条第一項の有罪判決に示すべき罪となるべき事実は、犯罪構成要件に該当する事実のみならず、犯罪の日時場所を示して犯罪事実を特定するに足る程度に判示すべきものであると解せられ(札幌高等裁判所昭和二十六年二月八日判決、高等裁判所判例集第四巻第一号五三頁参照。)、これを欠く判示は、判決に理由を附さない違法があるというべきである。原判決の判示は前記のとおりであつて、犯罪の日時場所が特定せず、従つて、これを全く示していないというの外はないので、原判決には理由不備の違法があり、論旨は理由がある。

控訴趣意第二点について。

論旨は、被告人は、昭和二十九年三月四日覚せい剤取締法違反の罪により、罰金五千円に処せられた前科が唯一回あるのみであり、しかも、その犯行の態様が判明せず、本件の犯行は、譲受、譲渡、所持という態様の異なる事案であるのに、これを常習として認定して、その法条を適用したのは、法令の解釈適用を誤つたものであるというにある。よつて、考察するに、昭和三十年八月二十日法律第百七十一号による改正前の覚せい剤取締法第四十一条第四項に所謂常習というのは、同条第一項各号に違反する行為を反覆して行う習癖のあることをいうものと解すべく、同条第一項の違反行為を各号別に観察すべきものではなく、これを包括的に観察して、同条第一項各号の違反行為を反覆して行う習癖あるものを包括して同条第四項の常習というを妨げないので、被告人の本件犯行の態様が譲受及び譲渡並びに所持というように異つていても、これを包括して観察し、原判決掲記の前科(記録に徴すれば、被告人は、右の外、昭和二十九年十月十八日名古屋簡易裁判所において、覚せい剤取締法違反の罪により、罰金二千円に処せられた前科があることが認められる。)があるに拘わらず、更に本件犯行を反覆して行つた事跡に徴して、常習性を認定するに十分であり、原判決のこの点に関する認定には、法令の解釈適用を誤つた違法はない。論旨は理由がない。

(裁判長裁判官 石坂修一 裁判官 高橋嘉平 裁判官 伊藤淳吉)

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